―階段(一階)―
[下までたどり着く頃には、繰り返されていた音は止まっていた。
カラララン、コツン。ぱたぱた。小さな足音が遠ざかっていったようなのもわかってはいた。階段で聞いた時の反応はどうにせよ、手摺があるのと男の沽券をかけて、落ちたりはしなかっただろう。]
何もいませんね。玄関いきま――
[最後まで降りて、とりあえず周りを懐中電灯で照らしてゆく。それがぴたりと止まったのは、ちょうど自分の足元を照らした時。
薄い光を反射する小さなものは何だ。と、身を屈めて拾い上げ――ぽとりと落とすと思いっきりあかりを前方にずらした。パティを伺い、見てなきゃいいんだけど、という顔をする。
今はもう照らさないそれは、ビー玉大の――人間の目に良く似た玉だった。感触や音は硬いものであるからか、顔を顰めて息を吐く程度で。]
ドア、開けにいきましょうか。
[落とされ、動きを止めたその球体が、まるでじっと後姿を見るように止まったことを知るよしもなかった。
勿論、自分に印を浮かばせるに至った"何か"の存在に気付くこともない**]
(167) 2010/07/20(Tue) 00時頃