―Xdayから一ヶ月・PM5:30・現実世界・病院―
[中から聞こえた声は懐かしい……あのゲームの最中に幾度も聞いた声そのままだった。
耳の奥で激しく脈打つ音が響くような気が、する。
ゆっくりと押し開けた扉の向こう、あの日と変わらない笑顔を浮かべるクリスマスを見てもまだ尚――いや、むしろいっそうに]
あの…えっと……久しぶり?おかえり、の方がいいのかな…この場合。
[真っ白な部屋の中、白いワンピースとリボンに包まれた彼女の姿へと向けた視線が泳ぐ。
どこか現実味もなくふわふわと揺れるような足元を踏み締めて、ベッドへと腰掛けた彼女の前まで歩み寄った。
言いたい事は沢山あった筈なのに上手く言葉に出来ないのが自分でももどかしい。
シミュレーションは繰り返していたのだけれど、そんなものは何の役にもたたなかったと実感しながら片手に持ったプレゼントの箱――くまのぬいぐるみを差し出した]
あの、これ…急だったから花とか用意出来てないんだけど、その……。
[彼女が包みを解けばすぐに気づくだろう。小さなくまの手にしたメッセージカードに浮かび上がる文字は――
僕も君が好きだよ]
(165) nanono 2014/03/30(Sun) 22時頃