223 【身内】森真珠の村


【人】 幸運の科学 リッキィ

―昼/墓地―

[ 白い華が咲いていた。
  嵐に見舞われた大地を癒やすような、雨の中。
  墓地を守るようにして囲む、一本の樹。
  その下に咲く白い華は、『わたし』にとって、
  奇跡のように思えた。
  そうして、そのそばには、そんな彼女を守るようにか、
  背の高い青年の姿が見える。
  雨と、かすかな風と、森がしずくを弾く音に、
  その話し声は聞こえないだろう。
 『わたし』の傘が、ほそい雨を揺らす音も、
  その空気をきりさくだけのような気がして、
  そうっと、音もなく、傘をとじた。
  あたまのてっぺんに、じわりと、雨を感じる。
 『わたし』の中で、だれかがうごめいたけれど、
 『わたし』はそれを制した。
  ごめんなさい。ごめんなさい。――心が叫ぶ、懺悔。
  それを向けたひとは、ここにはいない。]

(165) 2017/08/17(Thu) 03時頃

← ↓ ■ □

ツール

クリップボード

ピックアップ

>>【】