―昼/墓地―
[ 白い華が咲いていた。
嵐に見舞われた大地を癒やすような、雨の中。
墓地を守るようにして囲む、一本の樹。
その下に咲く白い華は、『わたし』にとって、
奇跡のように思えた。
そうして、そのそばには、そんな彼女を守るようにか、
背の高い青年の姿が見える。
雨と、かすかな風と、森がしずくを弾く音に、
その話し声は聞こえないだろう。
『わたし』の傘が、ほそい雨を揺らす音も、
その空気をきりさくだけのような気がして、
そうっと、音もなく、傘をとじた。
あたまのてっぺんに、じわりと、雨を感じる。
『わたし』の中で、だれかがうごめいたけれど、
『わたし』はそれを制した。
ごめんなさい。ごめんなさい。――心が叫ぶ、懺悔。
それを向けたひとは、ここにはいない。]
(165) 2017/08/17(Thu) 03時頃