>>144
[不意に距離を詰められた動きは予想の外、荷を両手で抱えて逃げ場がない己は、思わずに双眸瞠って顔を後ろに引かせる程度しかできず。注がれる、真っ直ぐすぎる視線に、それでもどうにか何か言おうと開きかけた口は、開いた形のままで止まった]
は?……っ!…、
[己の愛する顔に、僅かに刻まれ残った過去の記憶。長めに垂らした前髪で覆い隠していたそれを、無遠慮に覗きいった動きに、対処しきれず呆然とされるが侭になり。──ナユタが明る過ぎる大声を上げたところで、漸く自身は理解に到った。
……ゆっくりと立ち昇りだした、殺気、に近い空気の冷えに彼は果たして気付いただろうか]
──アンタは…、……その頭より先に手ェ出る感じ、…まったく、変わっちゃいねえなァ…?
[左のこめかみ近くに刻まれた額の痕は、遊ぶ少年達に倒れ掛かった木柵から咄嗟にナユタを庇った際にできたもの。…自身の顔を傷つけたもの等、あえて思い出したい記憶でもない。静かに片爪先を引き、チアキの脛を蹴ってやろうと試みかけたが、その前にナユタの拳がチアキを襲った>>155事に少々気を抜かれて、…長い溜息を落とした]
(164) 2013/07/19(Fri) 02時半頃