――訓練室――
[呟きの内容を朧が知っている>>140のは、つけられた水の気配によるものか、或いは現れた時に聞こえたか。
いずれにせよ、その言葉に耳を傾けようとする意思は残っているのだから、目の前の男がJがこれまで屠って来た「魔に堕とされた者たち」とは一線を画しているのがわかる。
かつてと同じように目を伏せるのはどんな感情によるものか。
「朧」でありながら魔に与する姿を見せられるのは堪えるなと戻って来た無表情の下で痛みを堪えた。]
何故――と考えても手遅れだと知ったところだ。
お前は、人生の多くを共に過ごして来た人々の中で生きるよりも、魔性に身を堕とす事をえらんだ。
その隙を作ってはいけなかった。
捕えられた時点で私の手落ちだった。
[そう、何故、と聞いてもきっと、詮無い事だ。
説得を試みるにはJは言葉が下手過ぎる。上手であればこの事態はきっと訪れていない。]
(163) 2016/06/12(Sun) 08時頃