ひっ────?!
[死体が動いた。そして、娘の細い手首をがしりと捉えたのには流石の娘も小さく悲鳴をあげていた。
先程までは初めての眼球の感覚に、大の男を殺した事実に、何とも奇妙な興奮めいたものを覚えていたのだがそれも瞬時に醒めた。
血の気が引き顔が青白く染まる。
狼狽えた娘の力など、手負いの時とは違い力を取り戻した男に勝てる筈もない。
小刀が引き抜かれ、突き飛ばされ娘は資料の山の端に尻餅をつく。
しかしその痛みよりも死体が生き返ったその衝撃の方が強い。
口元を抑え、ガタガタガタと無様に震えながら驚愕の顔で相手を見つめる事となった]
あ……、ニック、様………
なん、で………、確かに、死………っ
[そう、確かに死んでいた。
では今の相手はなんだ。
片目を空洞にして、此方を見つめて来るこの男は。
死霊?いや、そんな物が存在していたならば自分はとうに遭遇している筈だろう。
だが、そう。
この男は死霊であれそうでなかったとて
────危険]
(163) 2016/02/27(Sat) 10時頃