[ぱたぱたと駆け回る一六が、衣装を抱えて衝立の向こうから出てくる。>>157]
どれ? ……ああ、本当だ。
[衣装までしっかり再現されているとは、抜かりがない。
それが本物かよく出来た偽物かどうかは、衣装制作に携わった2人が一番よく分かるはずだ。
ふいに、視線をテーブルの上に向ければ、フレンチトーストが3人分、皿に乗せられていた。
「出来たてです」と言わんばかりに、艶やかにはちみつがきらめいている。
きっかり3人分置いてあることに、自分は、何を感じるべきなのか。]
……食いたい? これ。
[ちら、と視線を2人に向ける。
少なくとも自分は、到底食べる気にはなれなかった。
ただ、時間が経過すればどうだろう。今はまだいいけれど、昼を過ぎ、夜になってしまったら?
酷く非現実的な空間だと認識していながら、随分現実的な心配をしている。
どこか矛盾している思考に、吐息を落とせば、すぐ近くに一六の顔があった。]
(162) 2015/11/01(Sun) 23時頃