[何度も腕時計を見やる。鳳より先に着けたことに安堵したのも束の間。
約束の時間を少し過ぎた。彼が約束を破る人ではないと知っているから余計に。
置いて行かれてしまったのではないかと。自分との約束なんて忘れてしまったのではないかという不安がぐるぐると渦巻く。
置いていかないで。忘れないで。どうか、そばいにるだけで。それだけでいいから。嫌いにならないで。
考えなくていい事、そんなものさえ胸中に渦巻いて。
たった、数分。それだけなのに酷く不安定になってしまう自分は。
だから鳳がやってきた時>>96安堵で少し瞳に涙を溜めながら駆け寄って手を握ったのはきっと無意識だった。]
よかった…です。少しだけ、不安で。鳳さんがそんな人じゃないって分かってるのに。
ごめんなさいっ!急に手なんか握ってしまって…
いえ、いいのです気になさらないで下さいね。
[安堵した溜息を吐き、手を握ってしまったことに気付くと慌てて離す。
遅れた理由なんて関係なくて、彼がここに来てくれたこと。それだけで充分だった。]
(162) 2014/04/10(Thu) 05時頃