── 迷宮殿・書庫 ──
[目眩が治まり、輪郭が溶け出すような感覚も霧散して、ようやく視界が戻ってくる。
まず目に飛び込んできたのは、本棚にぎっしりと詰められた書籍の数々──なのだが、その規模が、先ほどとは大きく違っていた。
天井まで届くほどの本棚が壁一面にあり、脇には階段と、吹き抜けの2階まで存在している。
部屋の広さも、先程までは魔法陣を一陣描くのみで一杯一杯だったはずなのに、現在は部屋どころかホールと言い表しても差し支えない面積になっていた。]
……何、コレ……?
[呆然と足を踏み出せば、左手首の先がじゃらりと音を立てる。
見れば、鉄の枷と、そこから連なる1メートルほどの鎖。
鎖のもう片方の先は、──先程まで相対していた、魔術師の右手首に繋がっていた。]
(162) 2012/10/20(Sat) 00時頃