[意識下の会話では、押し隠された痛みにまで気付けはしない。>>141
その向こうで、苦い表情であった事も当然ながら、同様だ。
それでも、何故だろうか、明確に此れと分かるもののあるでもないのに、常と調子の違う気はしたのだ。
『そうか、それなら良い、
私も今丁度、北の方に居るのだが。
……… 其方へ行っても良いか?』
全く、手負いはお互い様だと云うのに、
相方の怪我ばかり気にして見るのも如何なのだろう。
両方が生きられねば、次の日の来ない遊戯に放り込まれたと云うのに、如何しても弱みを見せたがらない互いであった。
ざく、黒い蛙を霧と変じさせながら、返事を聞くより前に南の方へ足を向ける。
予感、などではなく、殆ど確信だった。
(それは、決して、
場所の指示が曖昧だったからではない。)
深く息を吸うと傷みの奔るものだから、浅く息吐きながらも、自然早足になっていた。]
(162) 2017/06/20(Tue) 14時半頃