[掃除夫の姿恰好がカメレオンのような、街に溶け込む迷彩色を持っているとすれば、自衛団の制服は甚だ全身を金で包んだかのように目立っているように感じられた。
掃除をしていると、話しかけてくるものもあまりいない。
たまに、道を訊かれたり、あるいは気のいい人々が挨拶をしてくれる程度である。
それがどうなのだろう、このモテぶりは。
外敵の警戒なんてとうの昔に捨て去った役割の代わりに、街の困った解決をしているらしいこの制服は、ゆりかごから墓場まで、道案内はもちろんのこと、はてはかけくらべでどちらが速いかという喧嘩の仲裁に入れば、審判を任せられる始末だった。
生来口も気も回る方でない彼としては、これまでにない徒労感に見舞われていた。
能無しだろうが能有りだろうが、つくづくこの仕事は向いていないと感じたのである。
青い空を背景に白さを際立たせる鳴らずの塔を見上げ、それにしても街は一見平和に見えた]
(160) 2011/09/25(Sun) 15時頃