[見慣れたモチーフのコースターに、こんなものも売ってるんですね、と語りかける声は、始めより滑らかになった頃合か。不意に聞こえた一言に、俯いていた双眸が真っ直ぐ、碧眼を窺う。]
それは、そのまま私が口にするべき台詞ですな
セナ様
貴方に助けていただいたのは、これが二度目です
……随分と立派になられた
[──ちゃんと、覚えているとも。
空気の冷たさ、赤く染まった耳殻。永遠のように感じた一瞬。いまだ分別のつかぬ感情の代わり、指先でグラスの縁を摘み、底辺を回転させて氷を溶かし、もうひとくち含む。]
例えば……?
いえ、この件に関しましては、特に
[市電主導で処理されるならば、これ以上彼の立場が悪くなる心配もない。
何が気がかりなのか察せないのは、前提の違いだろう。故意に触れられた自覚もなく、見知らぬ、或いはどうでもいい男との接触に何を思うでもない。
むしろ────。]
(157) 2019/07/28(Sun) 22時半頃