[隣に座るヒューから目をそらし、珈琲を一口口に含めば、一瞬で僅かに残っていたチョコは溶けていった。
こくり、と飲み込むと、熱が喉を通り、腹にとどまるのがわかった。
そして短い髪のせいか、耳が酷く冷たいような気がして、少しだけ温もりを覚えた指で、左の耳たぶを触った]
勇気、かぁ
……うん、さっきちょっとね
[ヒューが伝えてくれた言葉を、もう一度心の中で繰り返す。
勇気。
素直になるのは勇気がいる。
――そうだね、ミロ。
そう思う。だから……たとえば、チョコの甘みと、振るような――ではなく本当に降ってくる星空とか。あと、想いとかが、その勇気の燃料になればいい。
空を見上げて、はっきりと星に願った最初のことは、
「ミロに勇気を」
そのついでに自分にも、降って来ればいいのに。
二口目の珈琲は、もうそんなに甘く感じることはなかった]
(156) 2015/11/17(Tue) 23時頃