「ていうか、そもそも会計なったのも、あれでしょ」
「──館石さんの名前、あの漫画の主人公に似てるもんね?」
……やめて!
[気が付いたら、叫んでいた。
やめて、それは言わないで。それだけは、駄目だ。
館石 恋。
可愛い名前だと思う。
だけど、私にとってはもうひとつ、重要なことがある。
似ているのだ。大好きな漫画の主人公の名前に。
もしかすると、性格も少し似ているかもしれない。
ふわふわの髪を揺らして、ウィンクひとつで「大丈夫、行くよ!」って、前向きに苦難を切り開いてゆく主人公。
かっこよくてかわいくて、どうしようもなく憧れてしまう。
似てるな、とは、ひっそりと心の内に留めているだけだった。
でも、アヤカたちに漫画を貸した時に「この子、館石さんに似てるよね」と言われて、思わず「そうでしょ!?」と返したことがある。
実は、ずっとそう思ってたんだ。内緒だよ。
囁くように言って、笑ったことが、確かにある。]
(155) 2015/07/04(Sat) 22時半頃