[突如唇に触れた少しだけ冷たい感触。それが目の前の少女の指だと脳が認識するまで僅か数秒。
ちゃらり、少女の耳飾りが揺れた音がする。
先程より大きな音を響かせたように感じるのは物理的な距離のせいか。
動揺しているのを気付かれないよう、その白く華奢な指先を自らの掌で包み込んで記者の口元から離す。
顔があつい。きっと耳まで朱に染まってしまっていることだろう。
瞬きをして首を傾げるその仕草は、淑女と呼ぶにはやはりまだ幼さが残っている。
不確かな情報は他人に話すべきでないと思っているのと、ここで話してしまえば口の軽い男だと思われかねない。
さきほど少女と秘密を共有してしまったのだ。軽率な行動は避けたかった。
そうして、幾つか言葉を交わした後に持ち上げられたのは少女の手首。本来なら記者が跪くところだろうが、生憎とそういった教育は受けていないもので。]
(153) 2017/01/06(Fri) 01時頃