[程なくして席へと通されたシーシャに晶は満面の笑みを浮かべて応えた――つもり。笑顔が強張っていない自信はなかったから。
もっと気楽に騙せそうな男を選べば良かった。違う、そもそもこんな事が馬鹿げてる。
男達が作り物の笑顔に気付く度に、惨めで馬鹿なのは自分だけじゃないと慰められて、でも同じ位に前よりもずっと惨めな気持ちになった]
そんなに待ってないから大丈夫だよ。
でもお腹は空いちゃったなぁ…ここのレストラン、ピザが美味しいんだって。
なんか石窯で焼きらしいんだけど、でも仮想空間で石窯って何か変な感じだよね。
……ありがと。見てもいい?
[早口に捲し立てたのはずっと胸に詰まったままの重苦しい塊を吐き出したくて、だったのに。紙袋を差し出す彼の表情を見たら、また、喉の奥が塞がるみたいに言葉が詰まった。
覗き込んだ紙袋の中には可愛らしいくまのぬいぐるみ。晶には似合わない、きっとミルフィに良く似合う、そんなぬいぐるみ。
一瞬歪んだ表情を覆い隠すように顔を俯けて、大丈夫、もう一度笑顔を浮かべてぬいぐるみを取り出した]
(153) 2014/03/12(Wed) 20時半頃