[両断された目の前の黒が、霧に還るのを確認しないまま。
ひらり、所々破れ、白が大分と血染めになった袴着が揺らげば、
────… 身を、翻した。]
(此れ以上待たせる訳には。
先生と早く合流しなければ。)
[離れる前、未だ彼の居たなら、「疾く離れた方が良いと思うよ、」とだけは伝えてから去っただろう。
彼とは違い、振り切るつもりで疾ったものだから。
東エリアとの境を越える頃、見える範囲では雑音を見付けられなかった。
約束していた呉商堂書店まで来れば、漸くと先生の姿を見付ける、が。
金糸をした死神も居る事を見つければ、逡巡はあったが、其方へ地を踏んだ。]
── …りゅう?
[それが、狼を塵と帰した後なのか、或いはそれより後であったのかは青年の知るところにはないが。
制止でもなければ、藤色の姿に寄ろうとするだろう。]*
(153) 2017/06/22(Thu) 18時半頃