[物というのは不思議で。
買った時には大した価値もないのに、
人の手に触れ、思いに触れ、次第にその価値は重みを増す。
買った時には、大した価値のなかった蝶のキーホルダー。
あたしの鞄にくっついた日々、風紀委員に噛み付かれたこと、委員長に投げつけてしまって、そのあとに委員長が直したのだと嬉しそうにあたしを探してくれたこと。突き返して、真輝が引き取ってくれたこと、そしてどこかに隠れてしまったとしても。
思い出の分だけ、その価値は深くなっている。
ハンドメイドの蝶だって同じ。>>142
買った時には素材であったものを、真輝が時間をかけて作ったそのことで、思いが篭っている。一点ものという言葉が、まさしくそれに相応しい。]
――うん。
ありがと、大切にするよ。
[差し出された蝶を受け取る。
安全ピンのついた蝶は不自由だろうか。
作り手から、あたしの元へやってきたことで、
少しだけ羽ばたけたのだと誇って良いのにな。]
(151) 2017/02/01(Wed) 14時半頃