[他人から距離を取るのが己の常で、親しいと呼べたのはキルロイ一人。
後方支援が常である身では、戦闘部隊と絆を深める機会もそうそう無く、そもそも人付き合いが得意な性質でもなかったのだ。
――――否。
輪に入り辛く感じていた要因は他にもあった。
己と同じ水を操る異能を持ち、己と違って前線で戦う能力を持つ、ヤナギの存在だ。
戦えない己を誰に責められたわけでもなく、彼と比べられたことがあるわけでもない。そもそも、専門の分野が違うのだから比べられようもない。
ただ、己が己を責めているだけ。
その所為で、一方的にヤナギを疎ましく思っているだけ。
そんな自分を誰にも――特にキルロイとヤナギには、悟られたくは無かった。
だからこそ、他と距離を置くようになった。
冷たくするでもなく、明るく接するでもなく、当たり障りの無い応対を繰り返すだけ。己に求められるのは頭脳だけなのだから、それで何の問題も無かった。]
(151) 2016/06/04(Sat) 23時頃