[刃は咄嗟に伸ばした手には当たらず、自らの背中へと当り――思わず顔を顰めた。足元には紅が思ったよりも広がっていて、このまま止血が出来ないのであれば先は永くはないのかもしれない、と朧げに考える。]
ああ。もう。
やだなあ、着物が……汚れちゃうじゃ、ない、
[そんな文句を途切れ途切れに言いながらよろり、と状態を起こす。武器を失った右手には彼と出会う前に用意した数多の紙片と紙で出来た数匹の蝶々が。]
征ちゃん?
――もう、お別れに……しておこうか。
[じわり、じわりと身体から血液が抜けて行くのが嫌でも分かる。今更になって死ぬのが怖いと思い――過去を悔いるように唇を思い切り噛む。既に立っているのも限界で、残る力を振り絞り扇で風を起こす。ひらり、ひらりと紙片は風に乗せられ
て舞い上がり刃へと姿を変える。]
(150) 2014/12/14(Sun) 02時半頃