霞む意識の中で憎いはずの『彼』のことを思い出していた。
初めて彼を見たのは幼い頃…そう、教会であった。教会に出向いたのはその日が初めてであった。一方、彼は御一行で礼拝に来ていた。手を合わせて目を閉じて祈るその少年を見たとき、本当に美しいと感じた。
何を想って祈りを捧げているのだろう、どんな声で話すのだろう、どんな顔で笑うのだろう…どんな人なのだろう
その日から毎日教会に通った。そして彼の存在は幼い自分の胸を占めた。しかし上級の貴族であればまだしも、自分ほどの身分では話すことも叶わないのだと分かれば余計に熱情は燃え上がり、いつしかほとんど妄想で構築された彼に恋していたのかもしれない
ここを出たいと躍起になっていた。
新しくやり直したい、見返したい、成り上がりたい……
いろいろな野心があったが、決定的な願いがもう1つ
そうだ、昔から想うばかりでまだ彼と話したことがない。一度でいいから、彼と話してみたかった。**
(150) 2016/01/17(Sun) 22時半頃