― 自室 ―
[薄暗い部屋の中、30cm四方の銀白色の保護ケースが、その表面に青白い光の筋を走らせている。触れられたワクラバの掌から生体データを読み取り、認証を終えた保護ケースは音もなく中央から二つに割れた。回転しながらせり出したのは、クリスタル樹脂で満たされたシリンダー。内部には、黒色の小さな結晶体が埋まっている。Pavr=opetyの深海から採取した長さ3cmほどの薄い欠片。
La=Sta=Demonicの学者らの見解によれば、この欠片だけで、惑星内の総消費量10年分に匹敵するエネルギーを生みだすという。Pavr=opetyには、おそらく何倍もの結晶体が埋蔵されているはずだ。慢性的なエネルギー問題。枯渇がもたらす貧困と紛争。公害に汚染される風と大地。この結晶体は、それらの問題を解決する神からのギフトとも言えるだろう。まともに運用されれば、の話だが―]
(149) 2016/05/16(Mon) 00時頃