[辿りついたのは、広い空間。>>110立ち並ぶ本棚はそこには無く、代わりに家具の類がその場に満ちて、伸びた螺旋階段は天地樹のように。
嗚呼、
全てが、
酷く、
懐かしい。
全力疾走なんてしたの、何時振りか。
インドア派の身体にそんな運動耐えられる筈もなく、粗い呼吸をやっとの思いで整えて。《前》は大丈夫だったはずなのに《今》は酷く脆いのだなと、そんな思考に疑問を覚える余裕も無い。
艶やかな黒いテーブルと、揃いの黒と朱色の椅子。
何度、その椅子を引いただろう。
何度、その椅子から、傍らの自分を見上げられただろう。
何度、向かいあって座ることを許されただろう。
何度、何度も、その記録は自分の中に蓄積されて、
何度も、何度も何度も何度も、その姿を夢に見て来た。
眠りにつく《 》は、愛おしい記録のまま。
その姿を変えず、静かにそこに居ただろう。>>111]
(143) mzsn 2014/11/26(Wed) 22時頃