[空を見上げた視線を地面に戻す、その時に。
偶然を装ってチラリと "彼" の姿を視界の端に捉えてしまうのは、最早癖のようなものなのだろう。
例えば、誰かとの話が途切れた瞬間。飲み物を飲む瞬間。ふと息を吐く瞬間。
そんな隙間を見つけては彼の姿を追ってしまう視線に呆れた事は、一度や二度ではない。
邪魔をするまいと――話し相手への僅かな羨望もあったが――態々外した視線は、こうなってしまっては意味も半減。
ならばいっそと溜息一つで自分の愚かさを諦めたのなら、そろそろバスに乗らないものかとバスの方へと向かいがてら、もう一度視線を動かしてやった。
――しかし、出来るだけ自然を装って巡らせた視線の先にあったのは、楽しげに笑うような顔では無く。
ここからは表情の細部までは見えないけれど、彼の纏う雰囲気>>78が何処か沈んでいるように見えたのは俺の気のせいだろうか。]
(142) 2015/11/18(Wed) 20時半頃