……え、
[目の前で頬を抑える千景と、じんじんと熱い自分の拳。
ようやく頭が状況を呑み込んだ頃には、ひどく情けない気持ちでいっぱいだった。
そんな空気を払拭するように、千景が笑って智明と…の頭を軽くたたく。そうして握られた手に>>140]
……ごめんね。
…智明も、ごめん。
[ようやくそれだけをぽつりと呟いた。
握られた手を、拒否に見えないように気を付けながらそっと引き抜く。千景を殴ったばかりの右手には、まだその感触が残っていて生々しい。
その手で千景に触れるのが申し訳なかった]
水で、冷やそう。
……タオル、濡らしてくる。
[教室の自分の席に放置したままの鞄の中に、タオルが入っていたことを思い出し、のろのろとそれを取り出す。
雪道を歩いてくる途中で濡れるだろうからと家を出る時に鞄に入れてきたものだった。
それが今はもう遠い記憶のように思える]
(141) 2014/04/13(Sun) 14時半頃