『沙耶さん。出て来たのなら着物をお召しになって。茶道と華道を行いますよ。』
………はい…………お婆、様………
[有無を言わせぬ口調で祖母が言う。表情を曇らせた後、頷き、俯いた。背中を向け歩いていく祖母を見ながら、父が沙耶を抱きしめ、震える声で呟いた。]
「ごめん、ごめんな、沙耶……お前のやりたいこと、やらせてやれなくて、本当にごめんな………」
いいの、いいんだよ、お父さん……私は、これでいいんだよ……
「沙耶。父さんの前では隠さなくていいんだよ。沙耶が本当に目指してるのは……違うだろ?」
[そう言って優しく背中を撫でてくれた。父は本当に優しい。いつも私の味方をしてくれて、私の1番の理解者だった。]
私……本当はお父さんみたいな、素敵な演者になりたい…!
どうして、護は許されて、私はダメなの…!
[私は、ぽろぽろと涙を零して、父にしがみついた。
それが最後に、私が涙を流した時だ。]
(141) 2014/04/27(Sun) 12時頃