[手術室前の廊下のベンチで赤いランプを見つめる。
誰かがそこに加わるたびに、あたしはおかえりと声をかけて。
それから、考えた。
冷たい校舎で、この人と最後に別れたのはいつだったっけ、って。
例えば、永谷君と別れたのは、黒岩君のマネキンのあった空き教室の前だ。
あの時あたしは、あたしのマネキンは放置でいいよって言ったんだった。
結果的に屋上から飛び降りちゃったから、絶対的にそういうことになってしまったんだと思う。
いやでも目についただろうから、きっと目障りだったよね。
そんなつもりはなかったんだけど、今思えばまるで未来予告みたいだった。
悪いことしちゃったかな。
だけどそのことを謝ったりしたら、謝罪というより喧嘩を売ってるみたい。
あの時のあたしは、死ぬんなら、そのまま本当に死なせてほしいと思ってた。
あの世界で死んだあたしは結局ここで生きている。
だけど今は、生きててよかったって思うんだ。
人間って案外簡単に変わるものなのかもね。]
(140) takicchi 2018/02/25(Sun) 16時頃