ー 厨房 ー
[さてピッパは誘惑に勝てたのか。
くるりと綺麗な厨房を見渡して満足げに息を吐く。
油染み一つないタイル、床には畑で取れた野菜を沈めた氷を詰めた樽が並んで、食卓に並ぶその時を待っている。
完璧な我が城……氷の獣でありながら火に最も近い場所にいても何の苦痛もない。]
……あ、卵がねえや。
[さっき使ってしまったおやつの分でおしまいだったのをすっかり忘れていた。
他の獣よりは上手く化けられていると自負していても、どうにも顔が怖いらしく>>133中にはなかなか美味しい匂いを嗅がせてくれない少女もいる。おやつはあくまで仲良くなるキッカケみたいなものだ。
泣いている子より、怖がる子より、喜んでいたり笑ってたりする子の方が美味しそう……いや、愛おしく思う。大昔このがっこうに降りてきて、ただ獲物を狙う獣丸出しで庭を彷徨いていたら先住の獣にひどく叱られたんだっけ。
(よく考えたらほんの小さなこの少女達を一飲みにしそうな大狼がギラギラした目で草むらから覗いていたら怖かろう)
それから……ああ、そうだ。最初に食べたあの子が、俺に料理を教えてくれた。]
(139) 2016/10/07(Fri) 21時半頃