―鳩渓堂・書斎―
[戸を叩く音>>112に、ゆっくりとそちらを振り返る]
うん、入っておいで。
[一平太の声に応え、開いたままだった手記を閉じて文机の上に置く]
そうか、あの子も律儀な子だ。もう少し、肩の力を抜けるといいのだがなぁ。次に会った時、僕からも礼を言っておくよ。
[彼の留守中に、団十郎が訪ねてきたことも伝えて。そこで少し、迷う。あの「装置」は、それが必要な人物だろうが、要らぬ人物であろうが、持つ者に等しく効力を発する。今の「持ち主」である彼に、なんと説明したものか]
……傘のね、修理を相談された。それから、少し、ぺーたの思い出話を。
[何故、自分は迷うのだろう。「装置」が彼を守った、そのこと自体は、何の証明にも理由にもならぬというのに。……何を、懼れているのだろう。
よほど考え詰めた顔をしていたのだろうか。一服を勧められればそれに従い、淹れてもらった茶を口に含む]
そう、か。それなら、完成したら一番に見せてやろう。僕が精魂込めた力作だ。
[待ち遠しい。そう言って頷く一平太に、そっと微笑んで頷き返した]
(138) 2011/08/17(Wed) 22時頃