―地下室―
[地下室の中は暗く、じめじめとしていた。それでも、鼠や虫の気配もなく、使わなくなったのか壊れたか、調度品や機械類がうず高く積まれていた。]
…いない。
[それだけではない、深淵に近づいたような感覚が肌を舐める。
ただ、その奥まで見回しても、おそろいと言ってくれた友人の残滓すら感じることはなかった。]
…さよなら、とか、またね、くらいは、
言わなきゃ。…だったのに。
[その時にはもう、使用人と名乗る人々が皆、忽然と消えてしまったことを、少年は受け入れただろう。エルゴットさん、ポプラさん、リーさん、ラディスラヴァさん、アイリスさん。知り合った彼らの顔を少し思い出し、危害が加えられたとするなら…
どくり
気持ちが昂ぶったのか、この場所の深みか。
内からの雄叫びが、前よりもつよく、聞こえたような気がした。]
(138) 2014/11/05(Wed) 21時半頃