「何があなたを黒くしたの?」
[発せられた言葉>>127に目を丸くした。彼女は人の色ですら見えるらしい。
やはり有名な画家の子孫なだけあるな、と心の中で自分を嗤った。]
……おや、貴方にはいろいろお見通しなようですね。
僕は捨て犬なんです。救世主に捨てられた、みじめな捨て犬。
[かつては貧民街の少年が、あの人に拾われて今では歴史に名を残すピアニストとなった。ものを盗んだこの手にこんな才があると誰が思っただろうか。
でも、いくら富や名声を手にしたとしても、いつでも食事にありつける生活につくことが出来たとしても。本当に自分の欲しいものは手に入らなかった。]
捨てられるなら、いっそ拾われないままのほうがよかったのかもしれませんね。
ひもじくて惨めでも、こんな思い、しなくて済んだのですから。
[かつて大切な場所だったピアノ部屋。今では自分には何の価値もない。
彼女がいなければ、もともとあそこなど彼にとっては意味の無い場所だった。
だからこそ、自分のいるべき場所ではなく、理想の彼女の影を追って、庭にいるのだろうから。]
(137) 2016/07/30(Sat) 10時頃