[春の陽気の中。部屋でだらだら惰眠を貪るだけの退屈な時間が楽しく。
夏の昼間。項をつたう汗に何故かそわそわ落ち着かない。
秋の、朱く燃えるような空と冷たくなった風を受けむしょうに寂しくなった瞬間、いつも顔が浮かんで。
冬の朝、目覚める度。温かいベッドの、隣に、いてほしいとごく自然に、願う。
季節を重ねるごとに、伸びた身長の倍のスピードで彼への感情は形を変え、色を変え、深みを増していく。]
なあなあ、"ジャニスにい"って。
いい加減長くて面倒だから、さあ。
これからは"ジャーニ"って呼ぶから。
いいでしょ? だめ?
[いつものように、彼の部屋で勉強をする背中を眺めてごろごろしながら、訊ねたのは17の時だったか。
自分だけの、特別な呼び方がしたい。そんな幼稚で仄暗い独占欲を滲ませる頃にはもう、自覚していた。]
(137) 2015/11/12(Thu) 23時頃