……大丈夫、だいじょうぶ。
[拒まれない手は、そのまま宥めるようにぽふぽふとその髪を撫でる。それも、かつて自分がして貰った事をなぞる仕草。
その縮こまった様子が、かつて自分に暴力を振るった後、
自省する母の姿と似て見えて。
どこか懐かしげに、少しだけ眉を下げた笑みを浮かべた。]
自分で……、向こうでは、良くしていたの?
[見せられた傷痕。真新しいものと、古いもの。
刺し傷である事はわからなかったけれど、その痛々しさに眉を潜めた。]
掻き傷、なら。傷口拭って、清潔にしておけばいい…かな。
出来れば、服の布地が当たらない方が良いだろうけど。
[そう告げて、せめて流れた血を拭き取ろうと。
寝台のシーツを引っ張ってみる。
…流石に何の道具もなく裂くなんて真似は出来ず、
大人しくフィリップを待とうかと手を離した。]
(137) 2011/04/22(Fri) 22時半頃