……神崎くん、わたしは帰るよ。
[帰れる。唐突に、そう思った。
ここは、わたしの場所じゃない。
わたしが向き合うべくは、ここじゃない。これじゃない。
だから、帰れる。]
きっと、待ってる。ちゃんと帰ってきて、殴られろ。じゃなきゃ、許さない。知らない。
[ひどく疲れていた。反応を待たずに、背を向ける。階段を降りる。知らない。許さない。
何がなんだか分からないけれど、目頭があつかった。なんだよそれ。顔を上に向ける。泣かない。
九条を模したマネキンの隣を通り過ぎる。ぐずぐずと鼻を鳴らしながら階段を降りる。
顔を合わせたくなかった。疲れていた。教室の前を通り過ぎる。顔を、合わせたくなかった。
そのままずんずん歩いて、保健室の前で足を止めた。ドアに手をかける。
消毒液のにおいが、ひどく懐かしく感じた。吸い込まれるように、中に立ち入る。
随分前に感じるあの朝、自分が書いたメモがまだ残っていた。
少し泣いて、ベッドの1つに横たわった。すぐに、眠りは訪れた。]
(136) 2014/04/17(Thu) 23時半頃