―Xday-3day・P.M.2:30頃・現実世界、病室―
[室内から聞こえた小さな声に一つ、息を吸って吐き出した。
未だに緊張はするのだ…ろくに会話の続かなかった当初よりは随分マシになったのだけど。
扉を引いて視界に飛び込むのは白い部屋とベッド、そして微笑む少女の姿>>122だった]
久しぶり。今日カウンセリングの日だったからさ…この前言ってた小説、持ってきたよ。
[ベッドサイドまで歩み寄りショルダーバッグからカバーの掛かった文庫本を取り出してみせた。
小さなトースターと家電達が旅をする、そんな可愛らしい内容の小説だ。
きっとこんな本なら彼女も元気を出してくれる筈と――昨日彼女に告げられた残酷な言葉>>21など知らない晶は思った。
何時も通りにベッドの傍らへと置かれた椅子に腰掛け、ふと…思いついたように口を開いた]
あのさ、佐伯さん。
噂…知ってる?その、楽園、の…話。
[そういえば彼女とはいつも小説の話ばかりだった。
籠の鳥染みた生活の中にいる少女に外の世界の話をするのは、いけない事の様な気がして。
口に出してみたのは何故だろう…夜中に幾人かと楽園について語り合った、その興奮が少し残っていたからなのかもしれない]
(135) 2014/03/12(Wed) 03時頃