[空を見上げれば、重なる葉の合間から月が見える。>>52
聞こえてくるのは、枯葉を踏み締める足音と。木々の葉擦れの音。背中についてくる息遣いを意識しそうになって、慌てて行き先を確認するふりを。
黙々と歩いていると、徐に背中から声がかけられた。]
なんだよ、お前までそんなこと言うのかよ。
お袋が俺を生んだ年の倍を越したとか、
余計なお世話だ、ばか。
[耳が痛い話題に、前を向いたまま顔が歪んだ。]
……別に、今は仕事が楽しいし。
現地妻も隠し子もいねぇっつの。
まあ、たまにいいかんじになる相手はいるけどな……
今回だってツアー外せないから帰るっつったら
さよならの代わりがコレだぞ。コレ。
[少し顔を傾けて、左頬に残るひっかき傷を指差す。
というか、お前がそれを聞くのかよ。無意識に、声に拗ねた色が混じる。
意識なんてされてないからこそ言えるんだろうと、わかっていても。]
(134) 2015/11/26(Thu) 23時半頃