― 森の中 ―
寒かったら言えよ。
心配すんな、5年前に写真撮ったとこ連れてってやる。
こっちだ。
[地図は持たない。
バッグを背負い直せば記憶を頼りに、先導して森の奥へと歩き出す。
だんだん獣道になっていく足元に注意しながら、時折後ろを振り返り。淡く光るサイリウムバンドを探して足を止める。
少し離れていれば、追いつくまで待って。また歩き出す。
小さい頃は、とてもこんな風に年下の叔父を待つなんてできなかった。
子供の6歳差は大きい。体格が違えばできることも違う。
遊びたい盛りでは、足手まといが付いてくるのを嫌がったし。待ってあげなさいと母に怒られても、嫌だと突っぱねて先へ先へと駆けて行こうとするような悪餓鬼だったから。
手を引いてやるのは、さすがにこの年じゃあナシだよな。
手を差し出したところで、叩き落とされそうだ。
苦笑を噛み殺し、冷えてきた指先を擦り合わせた。]
(133) 2015/11/26(Thu) 23時半頃