[僕の世界だって成田は言った。なのに、世界は変わらない。夢は覚めない。此処は何処かわからない。ただ苦しくて痛くて寂しくて。雪ちゃんは何処にいるんだろう。何処へ行けば会えるんだろう。ここにいるのに身体がだんだんと冷えてきているような気がして。嫌だと思ったから抱きしめた。でも声が聞こえない。耳が悪いのかもしれないと思って澄ませても聞き取れない。何でかな。それなら俺の心臓をあげたらまた、笑ってくれるの?]
ずっと、いっしょに…いよ。
[誰にも言わなかった。黒髪の彼女。悪戯好きでちょっかいをかければ膨らむ頬がそっくりで気に入っていたその女の子にも絶対に言わなかった言葉がすんなりと出てくる。
片手で落としたナイフを探した。
血液が付着している方。さっきまで脈打つ首筋にあてたナイフを手探りで探し出せば切っ先にあたる。
指を切った。でも構わなかった。
今は、少しでも離したくなくて。
自分の声が、何処まで届いてるかもわからなくて。
無言で自分の頸動脈目掛けて刃を向ける。向けた。のに。]
(132) 2015/04/05(Sun) 16時頃