……わたくしが、あの方の"視"ているものが得られぬと識ったとき。
わたくしが、あの方と、あの方との恵みを失ったとき。
わたくしは、どうしようもなく理由を求めました。どうしてこのような災いがわたくしに降り掛かるのかと。
どうして、わたくしが、わたくしだけが、と。
[告悔のように、あるいは独り言のようにぽつりぽつりと言葉を続ける。
夫のことはいつも、あの方、と告げて名は呼ばない。名を呼ぶことさえ自らの身には恐れ多いと。
少し乗り出していた身体を戻す。
腰を抱くチャールズの手にもたれかかるように、ふたたびその身を長椅子に沈めた]
やがてそれは、わたくしが賎しい存在だからだと。穢れているからだと。そう思い至りました。
いえ、そう思いたかったのでしょう。賎しい考えから逃げるために。
今なら、そう考えてしまうのです。様々なものが耐え切れぬ、この場所では。
……傲慢。ああ、わたくしにふさわしい言葉ですわ。
[深く、息を吐いた]
(132) 2011/04/19(Tue) 23時半頃