[理性が戻ってみれば、自分に発信機のように水の気配がまとわりついているのにも気づいた。
蒸発させる事も考えたが、それだと相手側に自分が完全に戻った(とJは思っている)事を知られてしまう。
気づかないふりをして侮らせておこう。]
朧……何故だ、
[呟きも、筒抜けなのだろうか。
愛していたと言った男を思い出す。
愛を返さなかった事が彼の心に淀みを作ってしまったのなら。
この事態は自分が原因という事になる。
魔性は巧みだ。
人の「足りない」を「補ってくれるもの」として振る舞い、周りから孤立させ魔に依存させていく。
人の世界の宗教も魔性のそんな側面を模倣したものだろう。
満たされない想いを持った者は常に取り込まれる危険がある。
戦闘に身を置き人間らしい日常生活を送れない組織の人間は、取り込まれやすい。
家族の愛情や恋人との甘い時間を知らない者もたくさんいるから。]
(129) 2016/06/12(Sun) 00時半頃