― 三船さんの個室 ―
[「そういう風潮」>>120の心当たりは、まさに在学中によく耳に入って来たものだった。
そりゃ女が好きになる、とあっさり言われれば、そのまますとんと信じてしまいそうだった。
そうしたひとつひとつの話に、うん、と小さく声を落としていた。
三船さんだって、私と同じで、もう大人の世界を生きている。
そしておそらく私よりも、世間とか空気とか、そういうものが見える目を持っているのだろう。
そんな彼女が、否定しない、と言い切ったのを。ほんとだよ、と頷いたのを。
私はこの時漸く、信じようとはっきり思えた。]
…………ありがとう。
[漸く、私は自然に笑えた。不意に涙が滲んでしまったから、泣き笑いというべきだろう。
前髪越しのくすぐったさ、微かな温かさを、この時は素直に心地良く感じた。]
(129) 2017/02/01(Wed) 01時頃