あ――
[閂のあくびをみて、思わず口元を押さえる。
あくびはうつるというけれど、マドカの口からもまた小さなあくびがもれそうになっていた。
そういえば、今日は色々忙しかったし大変だった。
不意に身体の疲れが思い出されて、瞼がズンと重くなる。
部屋に戻る、という言葉には、素直にこくりと頷いた。]
あたしも、そうします。これから、宜しくお願いしますねっ。
[それから、邪魔してしまい――なんて、寂しいことを言われたのが気になって。
けれど果たしてなんて言っていいかわからず、彼の背中を見て――]
あ! あのっ閂さん! あたし、苗字で呼ばれるの慣れてないんで!
良かったら次あったときは、マドカって名前で呼んでくださいっ
[言ってから、なれなれしかったかなぁとちょっと後悔。
でもそれだって長くは続かない。
舞台人は度胸が大事。図々しいくらいでなきゃ、チャンスは逃げていってしまう。
もし閂が振り返ったのなら、手を振って見送るマドカの姿が見えるだろう]*
(129) 2016/12/26(Mon) 21時半頃