[秋野の世界は、たぶんとても狭い。
家と、学校。それだけだ。
高校生ならばそれでも普通なのかもしれないけど、秋野の家は、今では殆ど1人きりの家だ。
本もゲームもネットもやらないから、疑似体験の世界さえろくに広がらなくて、ますます秋野の世界は狭い。
だから、こういう世界に恵冬がいるのなら、いいなぁ、と思った。
本を読む恵冬のことを、とてもいい、と思う。]
けいちゃんて、すごいね。
[どういうタイミングだっただろう。恵冬に、そう言った。
その時も恵冬は本を読んでいたかもしれない。唐突な賞賛を、彼女はどう思っただろうか。]
本って、すごくいろんなことが詰まってるから。
けいちゃんは、普段こんなのたくさん読んでるんだなって。
そしたら、いいなぁ、って思った。
[俺は、ちょっと読んだだけでくらくらしてきちゃった。
最後にそう言って、笑ったのを覚えている*]
(128) 2015/06/24(Wed) 21時頃