………、そりゃあもう聞いた。何度も言わんでいい、ったく……、
[つい、と。真っ直ぐに見つめてくる坊主の視線に耐えかねて、ふいに視線を逸らして。ついでに一度止まった手を再度持ち上げ、坊主の顔を押しのける。
餓鬼は本当に、これだから。自分のような歳を食って汚れたオッサンには、その真っ直ぐさが痛々しい。
言葉も、行動も。どれもこれもが"間違って"いる事など、わかっているのに。
未だその間違いも正せずに――かと言って、間違ったまま進む覚悟も決まらずに。
ただ坊主を弄ぶようにして、中途半端な事ばかりを繰り返す自分が嫌になる、が。]
――……考えておく、と言ったろう。俺は男に走る趣味は無ェんだよ。
[押しのけた手で坊主の前髪を掻き上げ、絞り出すように言葉を紡ぎ。あぁまた一つ潰れた逃げ道に頭を抱えるのは内心だけで、今度は逃げないように坊主の目をじっと見据える。
これじゃあまるで、期待しろとでも言っているようじゃあないか。決定的な言葉はひとつもやらずに、ただこうして餌ばかりを撒き散らす自分に、坊主が愛想を尽かすのは果たしていつになる事か。]
(128) 2015/04/11(Sat) 17時半頃