[些細な動揺を悟られにくいのは、長年積んできた鍛錬と、生来の童顔を補う為に生やし始めた口髭が、多少なり表情を覆うから。
長時間の闊歩もなければ、汗の量だって控えめで。
代謝が活発らしい彼の為にも、気分屋が臍を曲げないといいが、なんて軽口を返すくらいの余裕はある。
ハンカチと書類を交換し、お構いなく、と定型文を去っていく背中へと向け。]
……これは、……?
[業務を終えた彼が、早く解放されるようにと。ジャケットのポケットから老眼鏡を取り出し、早速ボールペンを走らせようとした指がピタリと止まった。
予想していたものと、罪状がまるで違う。>>94>>95
ここまで揃っているのだから単なる間違い、というわけでもないだろう。訝し気な表情で記載されている文字をなぞる。
つい、下唇の下にペン尻をあててしまうのは、矯正しきれなかった癖のひとつ。]
(127) 2019/07/28(Sun) 19時半頃