── オリュース市電・事務所 ──
[呼ぶ機会がなかっただけで、数年も前から知っていた名前。顧客でも取引先でもない彼を何と呼ぶのが適切か。意識しすぎる余り少々、発音が甘くなってしまったのは不徳の致すところ。
不惑と呼ばれる歳なぞ、とうに過ぎたというのに。]
はい……?
ああ、始発の方が賑わうのもこの時期ならではですな
観光客も新規だけでなくリピーターも増えて
有難いことです
[ただの反芻だと声音で察せられた筈が、反射的に返事をしてしまうくらいには。>>116
自覚がないだけで緊張しているのかもしれない。予感が確信に変わったのは、無人の事務所に通された後のこと。
正直、詰所のような。もっとほかの乗務員がいると思っていたものだから。どことなく咽喉が乾き、息が詰まるのは何も湿った空気のせいだけじゃない、かもしれない。]
(126) 2019/07/28(Sun) 19時半頃