―温室―
[ヤニクを見送り、再び温室に静寂が舞い戻る。
左手へ、掌へと口付ける。
ヤニクを引き戻す前は、じくじくとした熱が其処にあったけれど、今はもう、無い。
矢張り、引き戻しの術は一度きりしか使えないのだろう。新たに熱を帯びた右の掌は熱を感じているけれど、もう、手の中に『眠り姫』は無い。
否、仮に存在したところで――]
此処に居る者を牢獄に送って何になる…?
引き戻しならば、――何度でも欲しいのに
[その後の牢獄の状況は掴めない。シュウルゥと、消えた生贄の行方はまだ解らない。深夜目にしたあの、ドナルドという青年が暴れていないと良いのだが…
ガーデンチェアに腰掛け、組んだ指の背に顎先を乗せて思案する]
――…、眠い…、
[何時しか微睡に落ちていた。誰かが温室内に訪れても、気づけないくらいの深い位置へ*]
(125) 2014/02/05(Wed) 01時頃