["闇詠い"――いまは"リツ"と呼ばれる魂が、選ばれた理由はわからない。
世界が有する霊的な記録庫の情報は、肉を持つ存在には理解しがたい。
だから、元来が肉体を持たず、霊体のみで創られた武器の魂であったからか。
あるいは、前世から受け継いだ因果のない、今世のみの純粋な魂であったからか。
ただ単に、冥府の水を全身に浴び、口に含みさえして、滅びていない在り様ゆえか。
もしくはただの、偶然か。それが正しいかもしれないが、ともかく。
アカシャの年代記、生命の書、天の書板とも呼ばれる――世界の記憶《アカシックレコード》
滅びに恐怖する世界は、おのれが記録したおのれへの悪意を、かれへ伝える《ダウンロード》ことにした。
それはときに、悪意を持つものどもの意図を知るのに役に立つかもしれない。
――だが、それが限度を超せば。注がれる害意が、あまりに強烈であれば。
恋に恋する少女のように、ヒトの理想に憧れる魂は、それに耐えられないかもしれない]
(125) 2015/06/12(Fri) 22時半頃