― 電子の海より:とある隊員の惑星SIL3399922探査記録 ―
[ 小惑星群の中のひとつ、SIL3399922に降り立ったのは研究員を中心とした探査チームだった。
酸素、なし。生体反応、なし。あるのは遠くを見通すことを阻む薄ぼんやりとしたガスだけ。大きさ以外一介の石ころと相違ないこの地に我々が降り立ったのは、他でもないこのガスを調査する為である。
可燃性、なし。支燃性、極微弱。
毒性、極々微弱。構成要素、不明物質数点。
外部活動服を纏った面々が黙々と任務を遂行する中、隊長が地表近くにくり抜かれたような虚を発見した。
人が縦に1人半、横なら3人は通れそうな空間は地表より濃くガスの色を漂わせ、行き先を覆い隠すように立ちはだかっている。
皆が隊長の判断を仰ぐように視線を向けると、フェイスカバーの向こう、鋭い眼光がベールの向こうを示すように顎が跳ねるのが見えた。
酸素の供給は十分。注意すべき生体反応もなし。ガス自体も特別危険なものでもない。より詳細なデータを得る為には、濃度の高いガスの獲得が重要だ。
研究員とはいえ調査チームに配属された隊員たちは素早く隊列を組み、調査機材と共に大口に飲み込まれていった。]
(123) 2020/08/26(Wed) 21時半頃