―昼/大衆食堂『森の真珠』・店内片隅―
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(彼女は昔からあまり表情が豊かではない。けれども出会った頃はまだ幼かったし、今でも自分と比べれば年下だ。被験者であり研究対象とはいえ、怠ってはいけないケアの部分を上位職の人間というものは理解しようとしない。何度か声を上げ、意見を提示した。それに対する返答はすべて「継続」という形で打ち切られたのだ。今思えば、あれだけ不満を挺していながら、左遷されなかった自分は逆に凄いのではなかろうかとすら思える。
故に、自分も「継続」した。彼女への態度を変えるつもりはなかった。誰が何と言った所で、彼女はただの便利な道具ではない。"一人の女の子"であるのだから)
(ふ、と。少しだけ彼女の雰囲気が変わったような気がした。気のせいだろうか?…昔にも、こんな事があった。まだ彼女が"彼女たりうる前"、ほんの少しだけ見せてくれた表情。ほんの少しだけ眉を下げて、思わず彼女の頭に手を乗せた。ああ、もうそんな年ではないと怒られてしまうのかもしれないけど、自分の中の何かがそうさせたのだ)
うん。たまたま持っていて良かったよ。これ一つで暫くは持つハズだから。
(122) 2017/08/11(Fri) 20時頃